わたしを傷つけるもの、私を幸せにさせるもの

 

これまで生きてきた人生の中でも
上位に位置するのではないかと思うくらい
この上ないショックを受けて
打ちひしがれた心と
どうしようもない空虚感を抱えていたあの日。

 

 

わたしは友人の家に行くために
何か手土産を持参しようと頭に浮かび、
その道すがらにある「道の駅」に立ち寄った。

 

 

私の薄暗く切ない心とは裏腹に
明るく鮮やかで瑞々しい輝きを放つダリアの花束に目が留まった。

 

彼女はサロンを経営していて
お客様をご自宅に招くお仕事をしている。
部屋にこの花が飾られていたらどんなに素敵だろうと
この花束を手土産にしようと私は決めた。

 

 

色とりどりの花束たち。
ただ、その場に佇みながらそれを見ているだけで、
その時、とても空虚で殺伐として、墨色をした私の心に
うっすらと彩を与えてくれるようだった。

 

 

心無い言葉に傷つく

その前日。

 

わたしはある人のある心無い言葉に
とても傷ついた。

 

それは、私の存在のすべてを否定されるような
破壊力のある言葉だった。

 

 

その言葉を放ったのは
とある組織の会社員。
おそらくその組織の中ではある程度、
地位のある60代を目前に控えた男性だった。

 

 

その人が放った言葉は
わたしが
女性であること。
自営業者であること。
スピリチュアルを仕事にしていること。
に向けられていた。

 

 

上から目線の横柄な態度。
それは「男尊女卑」という言葉を
絵にかいたような態度であった。

 

 

そしてその言葉は
わたしの中にあった
何年間かの思いと希望の光を
一思いに吹き消して
わたしを静かに奈落の底へと突き落とした。

 

 

ああ…。
これが日本という国の真実なのだ…。

 

 

私は静かにその思いを胸に沈めた。

 

 

 

 

それでもなお、人の心が私を救う

 

一束のダリアの花束を手に取り
私はその場を立ち去った。

 

 

すると、一人の老女が私に
「お嬢さん、お嬢さん。」と声をかけてくる。
「はい?」と振り返って返事をすると

 

 

「そのお花、買ってくれてありがとうね。
これね、もう、葉っぱが黄色くなっちゃってねダメなのよ。
でも、お花はまだまだ楽しめると思うのよ。だからあなたに上げる
レジの担当者さんには言っておくから持って行ってね。」

 

 

そう言って
彼女は売り物にはならないという
たくさんのダリアの花をわたしにそっと差し出してくれた。

 

 

年齢で言ったら70代後半のおばあちゃま。
きっと、この暑い日々の中
毎日お水をあげて、
強い日差しに焼けて傷んだ葉を丁寧に取り除く
手入れをしながら
丹精込めて育てた、彼女にとってとても大切なダリアの花を
嬉しそうにそっと私に手渡してくれた。

 

 

その花束は
月並みな表現だけど
まるで、乾いた砂漠に1滴の水を与えるように
私の心を一瞬にして潤わせてくれた。

 

 

捨てる神あれば拾う神あり。

 

 

時を重ねて蓄えられた
その深い皺をくちゃくちゃにして
微笑みかけてくれた
あの老女の優しさと穏やかな笑顔を私はきっと忘れない。

 

 

そして、
あの時、
あの言葉で
私を深く傷つけたあの中年の男性の
顔も、名前も、声すらも
あの人の全てを私はもう思い出せない。

 

 

 

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